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東海大学福岡校長先生のブログ

「ピンチこそチャンス」

2022/03/01

「ピンチこそチャンス」

~3月1日卒業式直前 校長メッセージより~

 

 いよいよ明日、卒業式を迎えることとなりました。皆さんは3年間本当によくがんばったね。特に2年間はコロナ感染拡大のなかで、精一杯がんばったと思います。この2年間私は、「ピンチこそチャンス」と言い続けてきました。

 

 今、世界中でピンチが起こっています。コロナもそうなんですが、先週からのロシアによるウクライナ侵攻です。侵略といっていいかもしれません。独裁者プーチンは、絶対に許されることではありません。この戦争で、私が一番関心をもっている人物は、ウクライナのトップであるゼレンスキー大統領です。多くの国の指導者は、自分が危なくなると、国外に逃亡し、亡命をします。ゼレンスキー大統領が国外に逃げると、指導者を失ったウクライナはロシアに簡単に攻め込まれてしまうと思います。ロシアはそれを狙っていた思います。しかし、彼は首都を攻め込まれている現在でも、「私はウクライナにいる。ウクライナを守る」とSNSで国民にメッセージを出し続けています。すばらしい大統領だと思います。ゼレンスキー大統領は4年前までコメディアンでした。そして、教師から大統領になるドラマの主人公を演じていたそうです。そのドラマが現実のものとなって、大統領になったという経歴です。

 ゼレンスキー大統領は今大ピンチです。でも、彼はそのピンチから一歩も逃げずに、チャンスをうかがって戦っています。ウクライナのピンチがチャンスに簡単に変わることは難しいと思います。私たちはなにもできません。ですが、私たち一人一人が、ウクライナの情勢を注視して、ウクライナに、平和と自由がもたらせる日がくることを願うことはできます。ゼレンスキー大統領、そしてウクライナの最大のピンチをチャンスに変えてほしいと願いましょう。

 

 話題を少し変えましょう。先日、北京オリンピックが閉幕しました。数々のドラマが生まれた中で、私が特に心を揺さぶられた話をさせてください。

 まずは、カーリング女子のロコソラーレ、本当にどんなピンチでも、笑顔と前向きなコミュニケーション、すばらしかったです。予選最終戦で、スイスに負けて、予選敗退と思われたとき、彼女たちはどん底だった思います。思わぬ準決勝進出が、彼女たちに銀メダルをもたらした原動力になった思います。まさしくどん底から這い上がっての銀メダルでした。

 スノーボードの平野歩夢選手、彼は2回目の滑走で世界最難度のパフォーマンスをしたにもかかわらず、1位に届きませんでした。その怒りで3回目の最終滑走のスイッチが入ったといっています。3回目の滑走では世界最難度の演技を完璧に滑って、見事金メダルに輝きました。怒りを力に変えた金メダルでした。

 フィギィアスケートの坂本かおり選手。坂本選手のジャンプではメダルに届かないといわれてきました。彼女は、表現力にこだわって自分らしさにこだわって滑り切りました。見事な銅メダルでした。自分らしさを信じてつかんだ銅メダルでした。

 どん底から這い上がっての銀メダル、怒りを力に変えた金メダル。そして最後まであきらめないで自分らしさを信じたメダル。どれも、「ピンチをチャンスに変えた」メダルだった思います。

 もう一人だけ紹介させてください。ジャンプ男女子混合種目の高梨沙羅選手の失格問題です。スーツの幅が規定より2センチ大きかったということでした。私は、「試合が終わってから抜き打ち検査をして失格にするなど、そんな馬鹿な競技があるか!」っと憤りを覚えました。ドーピング検査ならわかります。検査に時間がかかります。そして、選手の体や命に係わる問題ですから、試合後の抜き打ち検査という方法は仕方がないと思います。しかし、どんな競技でも、体重が適正か、用具に不正や不備はないか、テーピングや装具なども適正か、などのチェックは試合の前にします。今回の場合も、事前にチェックして、未然に直させることができたはずです。見事な大ジャンプのあと、抜き打ち検査をして、失格はないでしょう。しかも、沙羅選手を含めて、5名の女子選手が同じように失格になったそうです。あきれはてました。

 ですが、沙羅選手はすばらしかった。失格を言い渡された50分後、2回目のジャンプに挑み、98.5mという大ジャンプを見事飛びきりました。私は、大変な失意のなか、それでも仲間のために飛んだ見事なジャンプに感動を覚えました。

 数日後、沙羅選手は、自身のインスタにコメントを載せました。彼女は、自責の念、失望・絶望、そんな言葉では言い表せないどん底の状態だったと思います。彼女のインスタの写真が一面真黒だったことがそれを物語っています。

 でも、私はきっと立ち直ってくれると信じています。立ち直って、また歩み始めたとき、彼女は、今回の痛すぎる経験を、自分自身の強さ、たくましさにきっと変えてくれると思います。そして、さらに強くなって再びジャンプ台に立ってほしいと願っています。彼女の今回の経験は、彼女をより強く、より逞しく、そしてより優しい人に成長させていくと信じています。少し、高梨沙羅さんの話に熱が入りすぎたようです。

 今日、皆さんに伝えたいメッセージは、人生に無駄な経験は一つもないということです。どんな失敗も失望も、どんな悔しさや苦しいことも、乗り越えていくことで、自分の強さ、逞しさ、そして優しさに変えられることができます。

 皆さん、どんなときでも、決してあきらめずに前に進んでください。ピンチのときこそ、今のウクライナのように、逃げないでもがき闘ってください。決して戦争を肯定しているわけではありません。

 ピンチのときにあきらめないでもがきあがくことで、チャンスが生まれるはずです。「ピンチはチャンス!」忘れないでください。

 

 最後になりますが、私が以前高校3年の担任をするたびに、最後のHRで歌っていた歌で終わりたいと思います。松山千春さんの「大空と大地のなかで」 聞いてください。

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